ディーラーコーティングの現状

カーコーティングの施工割合が圧倒的に多いディーラーコーティング。料金も5万円~8万円と比較的低価格なコーティングのラインナップが多く、オプションとして車両ローンと一緒に利用できることから、一番手軽に依頼ができるカーコーティングです。近年ではより高品質な商品として、15万円を越える価格帯のカーコーティングを取り扱う店舗も増えています。しかし、このディーラーコーティングの品質ははたして価格に見合うものなのか。

ディーラーコーティング

ディーラーで行うカーコーティングは主に2つのパターンがあります。

【1】自社工場でカーコーティング専任スタッフによる施工
【2】下請け業者によるカーコーティングの施工

【1】の場合、主に整備士や直接雇用したカーコーティング専任スタッフが施工します。ただ、カーコーティング専任スタッフと言っても高い技術力を持つ職人が施工しているわけではありません。新車時のコーティングは特に高度な技術のいる研磨作業を行わないため、誰でも講習を受ければすぐに施工ができてしまいます。そのためディーラーで行うカーコーティングの施工難易度は低く、必ずしも高品質であるとは限りません。新車の場合、カーコーティングの作業時間は2時間程度です。

【2】の場合、ディーラーと業務委託契約をした下請け業者が施工します。
中古車の販売を同時に行う国産ディーラーや、外車ディーラーの多くは下請け業者を使ったコーティング作業がほとんどです。(研磨作業を必要とするため)規模の大きい協力会社が参入している場合もありますが、依頼件数が非常に多いため破格の施工料金で作業しています。そのため溶剤原価を引いても多くの場合、中間マージンとしてディーラー側に過大なメリットがあります。下請け業者の作業時間も単価の関係から3時間程度となるため、品質にこだわることができず1日2台以上作業しなければ利益が出せないのが現状です。

もちろんすべてのカーディーラーがこういった状況の中、カーコーティングを行っているわけではありません。ただこういった現状が全国的にも非常に多く、車両オプションとして扱われることでカーコーティング自体の評価が低下しています。近年のディーラーでのカーコーティングは、「車両値引きを抑えるための都合のいいオプション」になっていると言っても過言ではありません。

なぜ汚れが付きやすく、撥水効果がすぐに弱まるのか

撥水

カーディーラーで行うコーティングはなぜ汚れが付きやすく、撥水効果がすぐに弱まるのか。これはコーティング剤だけに問題があるのではなく、下地処理や施工環境に大きな問題があります。施工後、半年もしないうちに撥水しなくなる一番の原因はコーティング剤がしっかり定着していないためです。それではなぜ、コーティング剤が定着しないのでしょうか。

【コーティング剤が定着しない主な要因】
■研磨をしていないため、塗装表面が整えられていない。
■研磨はしているが、その後の脱脂作業を行っていない。
■屋外で施工している。(気温、湿度に関係なく施工)
■施工後の硬化時間をもうけていない。(施工後雨でもすぐに納車など)

新車の場合の研磨作業は、通常できるだけ塗装を削らないよう1ミクロン以下のコンパウンドを使用し塗装面を整えます。専門店では傷を磨く目的ではなく、コーティング剤の定着を目的とした「プライマーコンパウンド」などを使用し、研磨作業を行っている場合もあります。

コーティングは板金塗装と同じ原理

板金塗装

コーティングの施工は板金塗装と同じ原理です。塗装面が凸凹の状態では塗料が定着せず、また油分があれば塗料を弾いてしまいます。本来コーティング施工時も板金塗装のように下地の状態を完璧に整えなければなりませんが、簡易的なコーティングの普及で、安易な施工方法が一般的に広く認知されてしまいました。

そのため「キレイに見えればそのまま施工しても大丈夫だろう」という軽率な考えの中、コーティングを行う施工店が無数に存在しています。ただ塗り込まれただけのコーティングでは効果が最大限に発揮されないため、なんの意味も持たないコーティングとなってしまいます。

脱脂作業について

脱脂作業

中古車販売時に多い事例として、研磨後に下地処理の中でもっとも重要な「脱脂作業」が行われていない場合があります。この理由の多くは、作業者が「脱脂作業の必要性を知らない」ためにおこります。研磨後の脱脂作業は、油分をすべて取り除く作業になります。つまり、コンパウンドに含まれる油分もすべて取り除くと言うことです。

「ノンシリコン・ノンワックス」のコンパウンドを使用すれば、脱脂の必要がないと勘違いをしている方がたくさんみえますが、水溶性コンパウンドにも、潤滑剤と呼ばれる油分が含まれています。この油分がなければ、バフが回転する際に焼き付きを起こしてしまいうまく磨くことができません。

油分を含まない「水性コンパウンド」は、施工環境が整った専門店以外ではまず使用されていません。そのためディーラーや中古車販売店の多くは、主に油分を含んだコンパウンドを使用した磨き作業を行っています。

WAX

しかし、油分を含むコンパウンドを使うこと事態にはなんの問題もありません。油溶性コンパウンドも用途に合わせた幅広い場面での使用が可能です。例えば塗装の柔らかいホンダ車などは、あえて油分を含むコンパウンドを使用した方が効率よく磨けます。ここで問題なのは、その油分によって傷が誤魔化されてしまうということです。

固形ワックスが分かりやすい例です。ワックスには油分が大量に含まれているため、施工直後は傷を埋め素晴らしい艷がでます。しかし洗剤を使用した洗車を行うことで、そのワックス成分が流れ落ちてしまいます。コンパウンドの油分も脱脂をすることで流れ落ちます。すると、磨いてキレイになったはずのボディから傷が浮き上がります。これが「傷戻り」と言われる現象です。

研磨作業について

研磨

■脱脂作業をすれば、傷は一切ごまかせない。
■脱脂作業をしなければ、コーティング剤は定着しない。

それではどうしたら脱脂後も、傷の残らないコーティングができるのでしょうか。これには「傷をしっかり目視できる環境下」での正確な研磨作業が必要となります。

一般的に傷は研磨作業で「消す」と思われていますが、厳密に言うと一度ついた傷は消えることはありません。コンパウンドを使用しての磨きは傷を消す作業ではなく、自ら傷をつける作業です。研磨剤をただなんとなく変更しながら磨いているだけでは、何度やってもキレイに磨けません。

塗膜計

磨きとは粒子の異なる研磨剤(コンパウンド)を使用し、深い傷を浅い傷へと順番に置き換えていく作業です。そして目視できないレベルまで塗装面を丁寧に整えることで、はじめて傷が消えたように見えます。この作業を行うには、コンパウンドによって自らつけた傷を正しく判断できなければいけません。

そのため専門店では傷の深さを見極め、その傷にもっとも適したコンパウンドを使用します。さらに塗装の厚みには限界があるため、いかに研磨回数を減らし最短でベストコンディションにもっていくのかを常に考えながら作業を行っています。膜厚計を使用しながら塗装(クリア層)の厚みを事前に確認することも重要です。

脱脂をしても傷戻りしないのは、脱脂をしても傷が見えないレベルまで仕上げているからです。そして脱脂をすることで、傷の最終確認をするとともに、コーティング剤を定着させるための最終下地処理を完成させます。

オーロラマーク

画像のように「コーティング後なのに余計に傷が目立つ」といった経験はないでしょうか?こういった場合の傷はオーロラマークと言われる「磨き傷」です。未熟な作業者が研磨作業を行った場合、こういった波打つ傷が確認できます。

特にカーディーラーでのコーティングや鈑金塗装後に多い事例ですが、これは最終工程の磨き作業がしっかりできていないためおこります。傷を目視できる環境下で正しい研磨作業を行えば、こういったオーロラマークを残すことはありません。

最後に

コーティング専用ブース

弊社は、「本物」の技術を提供できるカーコーティング専門店を目指しています。コーティングは施工環境と技術力の2つがあってこそ、はじめて最大限の効力を発揮します。またコーティングの効果を長く持続させるには、メンテナンスが必要不可欠です。

カーコーティングは最適な施工環境で正しく施工されており、尚且つ定期的なメンテナンスを行っていれば効果は長期間持続します。逆を言えば屋外で施工されていたり、一つでも作業工程がおろそかにされていれば、どんなに耐久性の優れたコーティングでも数ヵ月しかもちません。「高級なカーコーティング=高品質なカーコーティング」とは限らないのです。

高額なカーコーティングの施工料金の大半は「技術料」です。コーティング選びを失敗しないためにも、どうかお客様自身の目と耳で、確かな情報収集をしてください。コーティング選びはお店の創業年数や知名度ではなく、確かな知識と技術を持った施工店をお選びください。

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